村上春樹の本を読んでみたいと思うけど、何を読めばいいかな~?
とお探しの皆様、ようこそ、まさにぴったりのページにいらっしゃいました。
村上春樹の全作品を読んできた私が、おすすめの作品をご紹介いたしましょう。
しかも無料でいますぐに読みはじめられる作品ばかりを。
別のサイトで試し読みをするくらいなら、このページで小説全体が読める方法にアクセスしてしまいましょう!
無料って…!?
それではさっそく始めます!
- 村上春樹のおすすめ作品の選択基準と、無料ですぐに読みはじめられるヒミツ
- 【すべて無料】村上春樹のおすすめ作品10選―短編集編
- 【すべて無料】村上春樹のおすすめ作品10選―長編小説+α編
- まとめ:村上春樹を読むなら、初心者でも既読者でも楽しめるaudibleの無料体験がぜったいおすすめ!
村上春樹のおすすめ作品の選択基準と、無料ですぐに読みはじめられるヒミツ
2024年2月現在、村上春樹の作品は、合計50冊以上にもなります。(村上春樹の翻訳作品は除く)
作品のジャンルも、長編小説のほか、短編集、エッセイ、ノンフィクション、自伝など多岐ににわたっています。
そんな数多くの村上作品の中から、おすすめの10作品をセレクトしてこれから紹介していきますが、先にその選定基準を明らかにしたほうがわかりやすいでしょう。
私の村上春樹作品のおすすめは、以下の3つのポイントにもとづいています。
- 無料ですぐに読める
- 年代ごとにおすすめをピックアップ
- 短編集と長編小説をバランスよく選出
それぞれのポイントについて、以下で詳しく書いていきます。
村上春樹のおすすめ10作品の3つのポイント①無料ですぐに読める
無料で、いますぐに読み始められる作品を第一としています。
せっかく村上春樹の作品に興味を持たれてこのページに来られたのなら、すぐに読み始められ、その魅力を感じていただくのが一番だと思ったからです。
しかも「無料」ということで、読み始めるまでのハードルは限りなく低くなっています。
村上春樹の作品を「無料でいますぐに読める」理由
ちなみに無料って本当?「試し読みできる」とかじゃなくて?
はい、電子書籍サイトのような出だしの数ページだけの試し読みではなく、作品のはじめから終わりまでを無料ですぐに読むことができます。
ただ、「無料で読める」というのは正確ではなかったかもしれません。
ただしくは「無料で聞ける」です。
現在、初回無料キャンペーンを行っているAmazonのオーディオブックサービスaudibleで、これからご紹介する村上作品をすべて無料で聞くことができるのです。
「無料だから、そんなに聞ける作品があるの?」と疑ったあなた、それは大間違いです。
日本だけで1000万部を売り上げて社会現象にもなった『ノルウェイの森』や、2017年に発表された『騎士団長殺し』など、村上作品を堪能するに十分な作品がaudibleには揃っています。(そして、作品はどんどん追加されていく模様)
村上春樹にやたら力を入れてくれているAmazon、ありがとう!
【ところで】オーディオブック初心者の方にも村上春樹作品をおすすめできる理由
オーディオブックだと内容が頭に入ってくるかな…
そう不安に思った方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、以下の通り、心配ご無用です。
村上春樹は、デビュー当時からわかりやすい文章にこだわっている作家です。(※)
ですので、聞き取れないような難しい文章はどの作品にもありません。
むしろ、朗読により、村上春樹が創作中に常に意識しているという「文章のリズム」がより引き立つ結果となっています。
さらに、audibleの村上作品のナレーターは、皆、個性ある読み手ばかり。
書籍では感じられない読書の楽しみが、audibleでは見えてくることうけあいです。
読書家の方のために―オーディオブックを楽しむ秘訣
なお、オーディオブックのナレーションは、一般的に誰でも聞き取りやすいようにゆっくりとしたペースになっています。
特に本を読み慣れた人にとっては、「ちょっと朗読が遅いな」と感じられるかもしれません。
そんなときは、少しナレーションの速度を上げて試してみてください。
どこかでぴったりと自分に適した速度が見つかるはずです。
村上春樹のおすすめ10作品の3つのポイント②年代ごとにおすすめをピックアップ
そして、作品が発表された各年代から村上春樹のおすすめ作品をピックアップしています。
村上春樹が最初の小説『風の歌を聴け』を発表したのは1979年。
それから40年以上、村上春樹はコンスタントに作品を刊行し続けています。
そして40年以上の作家キャリアの中で、村上春樹は文章や小説のスタイル、テーマを少しずつ変化させてもいます。
ですので、特定の期間の作品に絞って「これが村上春樹だ!」と紹介するのはミスリードでしょう。
それよりは、年代ごとにおすすめの作品をご紹介し、その中から気に入った作品を見つけて、村上春樹の小説世界への入り口としていただくのが最善と判断しました。
なお、以下は個人的な印象レベルですが、私が村上作品の各年代に感じる傾向です。
村上作品の年代ごとの傾向(個人の感想)
1980年代 |
それ以前の日本文学とは異なる新しい文体でデビューした1979年から続く初期。「村上春樹」と聞くと多くの人がイメージする特徴が詰まっている期間。
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1990年代 |
80年代の軽さから、現実↔非現実の行き来を駆使してより重厚なテーマを扱うようになった期間。初期から続く文体はよりテクニカルで鮮やかに。
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2000年代 |
90年代の深遠さが水平方向にも広がり、よりオープンで包括的な物語へ。文体も技巧的なものから、より自然な文体にシフト。
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2010年代~ |
文章はさらに透明で微妙な書き分けが行われるようになり、テーマも人間の存在に関する普遍的なものを扱うように。
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村上春樹のおすすめ10作品の3つのポイント③短編集と長編小説をバランスよく選出
10冊のおすすめでは、最初に短編集、そのあとに長編小説を選んでいます。
村上春樹は、小説家としての自身の特性を「長編小説作家」だと定義しています。
ですが、もちろん短編小説にも村上春樹のエッセンスはぎっちり詰まっています。(余談ですが、村上春樹の短編小説のなかには、後に長編小説として結実していくものも少なくありません)
ですので、まずはコンパクトで読みやすい短編集から入り、その後、作家渾身の長編小説に進むというステップにしました。
少しずつ村上春樹に浸らせて、最後には春先の沼に落ちたかわいそうな羊たちのように抜け出せなくするおそろしい魂胆さ、フフフ…
というのは嘘ですが、このページが村上春樹の面白さを知るきっかけになってくれればうれしいです。
それではおすすめ作品を紹介していきます!
【すべて無料】村上春樹のおすすめ作品10選―短編集編
まずは村上春樹の短編集のおすすめからご紹介していきます。
おすすめのその前に―「村上春樹のおすすめ作品10選ー短編集編」の使い方
実際のおすすめ作品の紹介に移る前に、一点だけお願いせてください。
お願い:最初の2つの作品は必ず聞いて!
短編集のおすすめの最初のふたつは、最初期と最近の作品からピックアップしています。(作品の刊行年の開きは約30年)
「これも村上春樹なの!」ときっと驚かれるほど雰囲気が異なっているはずで、村上作品のバリエーションの広さを感じられるように、あえて紹介をこの順番としています。
どちらか一方だけを読んで、「村上春樹は合わないな…」と思うのはとてももったいないです。
ですので、少なくとも最初の2冊は試してみてください。
そして、2つの作品を聞き終わったら、気に入った年代に近い他のおすすめ作品を聞いてみる、と進んでいただくのが良いかと思います。
もちろん、両方とも気に入ってもらえれたなら、よりうれしいです。
また、短編集ですので、まずは各作品をちょっと聞いてみて、気に入ったものをつまみ食いしてもいいかもしれません。
なにしろどれだけ聞いても無料ですので!
各短編集の紹介では、個人的なおすすめ作品もあげています。
そちらも参考になれば幸いです。
村上春樹のおすすめ作品①『パン屋再襲撃』(1986年刊)
Amazon評価(レビュー数) | ☆4.1(367) |
ナレーター | 柳楽 優弥 |
再生時間 | 5 時間 6 分 |
※Amazon評価・レビュー数は2024年2月現在のAmazon本カテゴリのページより取得。(以下同様)
世間一般の多くの人がイメージする「村上春樹らしい小説」がラインナップされている短編集ではないかなと思います。
男たちはスパゲティーを茹で、たくさんのビールを飲み、女性たちと寝ます。
そして表現や比喩などの文体は「これぞ村上春樹!」としか言いようがなく、文章はユーモアに溢れています。
個人的にはおかしくも哀しい「ファミリー・アフェア」がお気に入りで、「パン屋再襲撃」の空腹に関する比喩は空前絶後。必聴です。(こんな比喩、村上春樹にしか書けない)
なお、収録されている「ねじまき鳥と火曜日の女たち」は、のちの村上春樹を代表する長編小説『ねじまき島クロニクル』の原型となっており、その点でも興味深い短編です。
この短編からあんなに長大な物語になるなんて、小説って面白い!
『パン屋再襲撃』のあらすじと目次
以下は『パン屋再襲撃』のあらすじと目次です。
堪えがたいほどの空腹を覚えたある晩、彼女は断言した。「もう一度パン屋を襲うのよ」。それ以外に、学生時代にパン屋を襲撃して以来僕にかけられた呪いをとく方法はない。かくして妻と僕は中古カローラで、午前2時半の東京の街へ繰り出した……。表題作ほか「象の消滅」、”ねじまき鳥”の原型となった作品など、初期の傑作6篇。
文春文庫裏表紙より
- パン屋再襲撃
- 象の消滅
- ファミリー・アフェア
- 双子と沈んだ大陸
- ロ-マ帝国の崩壊・一八八一年のインディアン蜂起・ヒットラ-のポ-ランド侵入・そして強風世界
- ねじまき鳥と火曜日の女たち
村上春樹のおすすめ作品②『女のいない男たち』(2014年刊)
Amazon評価(レビュー数) | ☆4.0(2672) |
ナレーター | 市原 隼人 |
再生時間 | 9 時間 18 分 |
多くの方は、さきほどの『パン屋再襲撃』とは随分違った印象を持たれるかと思います。
『パン屋再襲撃』で特徴的だった鮮烈な比喩や、主人公たちのある種の軽薄さは引き潮のように背景に下がり、文章は落ち着いてより透明に、人物たちの微妙な陰影を映す作品が目立ちます。
いわゆる「村上春樹的」なイメージとは異なるかもしれませんが、どれも深い味わいの残るベストテイクを集めたような短編集です。
なお、収録されている「ドライブ・マイ・カー」は濱口竜介監督により2021年に映画化もされ、カンヌ映画祭や米国アカデミー賞といった多くの国際的な映画賞も受賞しています。
映画「ドライブ・マイ・カー」は2024年2月現在、Amazonプライムビデオの見放題作品です。興味がある方はぜひ見てみてください。
なお、映画「ドライブ・マイ・カー」には、同じく『女のいない男たち』に収録されている「シェエラザード」と「木野」のエッセンスも取り入れられています。
この印象的な2つの短編がどのように組み込まれているのか、探してみるのも映画の楽しみ方のひとつです。
『女のいない男たち』のあらすじと目次
以下は『女のいない男たち』のあらすじと目次です。
舞台俳優・家福をさいなみ続ける亡き妻の記憶。彼女はなぜあの男と関係したのかを追う「ドライブ・マイ・カー」。妻に去られた男は会社を辞めバーを始めたが、ある時を境に店を怪しい気配が包み謎に追いかけられる「木野」。封印されていた記憶の数々を解くには今しかない。見慣れたはずのこの世界に潜む秘密を探る6つの物語。
文春文庫裏表紙より
- ドライブ・マイ・カー
- イエスタデイ
- 独立器官
- シェエラザード
- 木野
- 女のいない男たち
村上春樹のおすすめ作品③『レキシントンの幽霊』(1996年刊)
Amazon評価(レビュー数) | ☆4.1(392) |
ナレーター | 滝藤 賢一、門脇 麦 |
再生時間 |
6 時間 4 分 |
再び時代をさかのぼり、今度は1990年代の短編集です。
比較的ひょうひょうとした『パン屋再襲撃』にはなかった、現実世界の深層に切り込んでいくようなある種の重さがテーマに加わっています。高校の教科書にも掲載された「沈黙」もこの短編集におさめられています。
もちろん、引き続き「村上春樹らしい」鮮やかな表現や、現実と虚構が交差するマジカルな物語も「緑色の獣」、「氷男」などの作品に見ることはできます。
とはいえ、人間の深淵や不条理といったテーマが見え隠れする作品の全体的なトーンはやはり重めです。(そして、これらの作品の重厚さは、長編小説『ねじまき島クロニクル』で頂点をむかえます)
個人的には、日常に徐々に不条理が口を開けていくような「氷男」と「トニー滝谷」が好きです。
「トニー滝谷」は2004年に映画化もされ、一時期はAmazonプライムビデオでも見られたようですが、残念ながら2024年2月時点では視聴できなくなっていました。
この奇妙でもあり、「人が何かを失うこと」を間接的な表現で読者に突きつける小説が、映画ではどう表現されていたのか見てみたかったのに!
なお、オーディオブックならではのところでは、滝藤賢一さんのナレーションが情感があってすごくいいです。
『レキシントンの幽霊』のあらすじと目次
以下は『レキシントンの幽霊』のあらすじと目次です。
古い屋敷で留守番をする「僕」がある夜見た、いや見なかったものは何だったのか?椎の木の根元から突然現われた緑色の獣のかわいそうな運命。「氷男」と結婚した女は、なぜ南極などへ行こうとしたのか…。次々に繰り広げられる不思議な世界。楽しく、そして底無しの怖さを秘めた七つの短編を収録。
文春文庫裏表紙より
- レキシントンの幽霊
- 緑色の獣
- 沈黙
- 氷男
- トニ-滝谷
- 七番目の男
- めくらやなぎと、眠る女
村上春樹のおすすめ作品④『東京奇譚集』(2005年刊)
Amazon評価(レビュー数) | ☆4.3(527) |
ナレーター | イッセー 尾形 |
再生時間 |
6 時間 19 分 |
1990年代の深く、重厚な村上春樹の作品が、よりオープンで多様性を広げる方向に進んだ2000年代の短編集です。
タイトルのとおり、東京を舞台の一部としたちょっと不思議なお話が集められています。
技巧的な表現は控えめになり、登場人物が多様化し、深みを備え、より包括力のある大きな物語を予感させるものになっています。(個人的には最近の作品になればなるほど、村上春樹が小説の理想の形のひとつと考えるドストエフスキーの小説に近づいている感じがします)
映画化もされた「ハナレイ・ベイ」と、「日々移動する腎臓のかたちをした石」が個人的には特におすすめです。
また、映画「トニー滝谷」で主演をつとめたイッセー尾形さんの独特でねっとりとしたナレーションが不思議と癖になり、必聴です!
また、2024年2月現在、「ハナレイ・ベイ」はAmazonプライムビデオでレンタル可能です。作品を読んで気になったら見てみてください。
ハワイの風景が爽やかで、吉田羊さんをはじめ俳優陣も違和感なく、なかなか良い映画になってました!
『東京奇譚集』のあらすじと目次
以下は『東京奇譚集』のあらすじと目次です。
肉親の失踪、理不尽な死別、名前の忘却……。大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込んだのは、偶然と驚きにみちた世界だった。孤独なピアノ調律師の心に兆した微かな光の行方を追う「偶然の旅人」。サーファーの息子を喪くした母の人生を描く「ハナレイ・ベイ」など、見慣れた世界の一瞬の盲点にかき消えたものたちの不可思議な運命を辿る5つの物語。
新潮文庫裏表紙より
- 偶然の旅人
- ハナレイ・ベイ
- どこであれそれが見つかりそうな場所で
- 日々移動する腎臓のかたちをした石
- 品川猿
【すべて無料】村上春樹のおすすめ作品10選―長編小説+α編
ここからは村上春樹の長編小説のおすすめを紹介していきます。
「この流れで読んでもらえれば村上春樹の小説の魅力が伝わりやすいかな」という順番に作品を並べています。
ですが、すでにおすすめの短編集で各年代の雰囲気が掴めていれば、気に入った年代のものから読んでいただいても大丈夫です!
村上春樹のおすすめ作品⑤『ノルウェイの森』(1987年刊)
Amazon評価(レビュー数) | 上巻 ☆4.2(764) 下巻 ☆4.3(434) |
ナレーター | 妻夫木 聡 |
再生時間 |
上巻 8 時間 9 分 下巻 7 時間 33 分 |
『パン屋再襲撃』の村上作品の雰囲気が好きな方には、特におすすめです。
ただ、この作品では、村上春樹の作品にしばしば見られる超自然的な存在や力は意図して排除され、その点は他の1980年代の作品とは異なります。(村上春樹いわく「100%のリアリズム小説」)
その分、20歳前後の主人公の微妙な心のひだの震えが神がかり的な精度で描写されていて、主人公以外のキャラクターも生き生きとして楽しく、でもそれだけに、とてもかなしい気持ちにもなってしまう小説です。(良くも悪くも)
「さすが日本の文学史上に残るベストセラー!」と言える完成度で、読書好きなら読んでおいて損はない作品だと思います。
なお、妻夫木聡さんの朗読は淡々としているけれど、逆に言えば余計な装飾がなく、村上春樹が書いた文章自体により集中できて、これはこれで「あり」です。
映画「ノルウェイの森」もプライムビデオでレンタル可能だけど、直子役の菊地凛子がどうもミスマッチな感じがして気になる…。映画を見たあと、小説内の直子もしばらく菊地凛子のイメージに侵食されてしまうくらい存在感のある女優さんだとは思うけど。。。
『ノルウェイの森』のあらすじ
以下は『ノルウェイの森』のあらすじです。
暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は1969年、もうすぐ20歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱し、動揺していた。限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
講談社文庫裏上巻表紙より
村上春樹のおすすめ作品⑥『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(2013年刊)
Amazon評価(レビュー数) | ☆4.1(2266) |
ナレーター | 向井 理 |
再生時間 |
13 時間 56 分 |
お次は、村上春樹の長編の中では小ぶりなこの小説を。
学生時代のユートピア的な交友関係からの追放(=喪失)と、その回復という従来の村上春樹的なテーマを扱いつつ、間違いなく2010年代の村上春樹作品になっています。
文章は『女のいない男たち』でも見られたように、より透明に進化し、多数登場する人物を深く掘り下げ、「彼らの世界観」としてそれぞれを書ききっています。
複数の登場人物の「世界観」を重ねることで、トータルで多面的な小説世界を提示する2000年代以降の村上春樹の手法が作品に結晶化しています。
ミステリー的な要素も備えながら、いまは離れ離れに暮らすかつての友人たちを訪ねるロードムービーにもなっており(タイトルにもある「巡礼」の通り)、コンパクトながら読み応えのある作品です。
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』のあらすじ
以下は『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』のあらすじです。
多崎つくる、鉄道の駅をつくるのが仕事。名古屋での高校時代、四人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、四人から絶縁を申し渡された。
文春文庫裏表紙より
何の理由も告げられずに――。
死の淵を一時さ迷い、漂うように生きてきたつくるは、新しい年上の恋人・沙羅に促され、あの時なにが起きたのか探り始めるのだった。全米第一位にも輝いたベストセラー!
村上春樹のおすすめ作品⑦『ねじまき鳥クロニクル』(1994-95年刊)
Amazon評価(レビュー数) | 第1部 ☆4.2(384) 第2部 ☆4.4(261) 第3部 ☆4.3(351) |
ナレーター | 藤木 直人 |
再生時間 |
第1部 11 時間 23 分 第2部 12 時間 10 分 第3部 17 時間 8 分 |
個人的な「マイベスト村上春樹」で、初期から続く表現のオリジナリティと、現実と虚構が交わる想像力が頂点に達したと思われる長大な小説です。
時間や空間を超えた広大な舞台と、多様な語り手にバトンを渡しつつ、現在の「僕」周辺のパーソナルな「歴史」や「暴力」の物語に収れんし、紐解かれていくストーリーはサスペンスを読んでいるような気分にもなります。
ただこう聞くと、ひどく重たい物語に聞こえてしまうかもしれません。
ですが、『ねじまき島クロニクル』の文章自体はあくまで軽妙で、くすっと笑えるユーモアも随所に散りばめられています。
作品の優れたリズムにより、やめ時がわからない危険な小説とも言えます。
なお、藤木直人さんの朗読は、主人公「僕」のイメージより若干さわやかすぎるな、というのが第一印象でした。
けれど、聞いているうちに、良い意味で明るさを物語に引き入れる役割を果たしている感じがしてきて、これはこれで良いです。
『ねじまき島クロニクル』のあらすじ
以下は『ねじまき島クロニクル』のあらすじです。
「人が死ぬのって、素敵よね」彼女は僕のすぐ耳もとでしゃべっていたので、その言葉はあたたかい湿った息と一緒に僕の体内にそっともぐりこんできた。「どうして?」と僕は訊いた。娘はまるで封をするように僕の唇の上に指を一本置いた。「質問はしないで」と彼女は言った。「それから目も開けないでね。わかった?」僕は彼女の声と同じくらい小さくうなずいた。
新潮文庫裏表紙より
村上春樹のおすすめ作品⑧『海辺のカフカ』(2002年刊)
Amazon評価(レビュー数) | 上巻 ☆4.3(782) 下巻 ☆4.2(588) |
ナレーター | 木村 佳乃 |
再生時間 |
上巻 15 時間 31 分 下巻 15 時間 40 分 |
『ねじまき島クロニクル』で作った大きな深遠な物語を、水平方向に広げたような作品です。
主人公にも15歳の「カフカ少年」と、知的障がいを持つ60代の「ナカタさん」という振れ幅の大きい二人が据えられています。
それ以外にも、これまでの村上作品には登場しなかったような人物や場所が前面に登場している点がそれまでの作品とは異なるポイントです。
一方で「悪」や「暴力」、「運命」といったテーマは『ねじまき島クロニクル』にも共通し、それまでの村上作品のように超現実的な出来事は依然起きます。
ですが、超現実的な出来事は起きつつも、『海辺のカフカ』ではより、現実的でフィジカルな次元によって物語的な解決をしようとしている印象を個人的には強く受けます。
その基本的な作者の「姿勢」のようなものが物語に通底しているからか、非現実的な描写が多くありながら、奇妙に現実的な読書体験となっています。
「読む前と読んだ後では世界の見え方が違う」という村上春樹が理想とする小説の条件のように、物語を通り過ぎると必ずや別の人間になっていることを感じる、それだけ力のある小説です。
『海辺のカフカ』のあらすじ
以下は『海辺のカフカ』のあらすじです。
「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」――15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真……。
新潮文庫裏表紙より
村上春樹のおすすめ作品⑨『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(1985年刊)
Amazon評価(レビュー数) | 上巻 ☆4.3(384) 下巻 ☆4.3(317) |
ナレーター | 大森 南朋 |
再生時間 |
上巻 13 時間 2 分 下巻 12 時間 22 分 |
「村上春樹の最高傑作」として「推し」も多い初期を代表する長編小説のひとつです。
小説は、ふたつの物語が交互に語られるめずらしい形式が取られています。
「私」に仕組まれた謎をめぐって物語がドライブする現代的で冒険的な「ハードボイルド・ワンダーランド」と、謎めいた「街」で静かに進行する「世界の終わり」の「僕」の物語。
「そんなまったく異なるふたつの物語が、どう関係するのか?」といえば、ちゃんとするのです。
普通はまとめようとすれば無理や破綻が出そうなふたつの物語を、最後にはぴったりと重なり合う小説として成立させる完成度の高さもこの小説のポイントです。
なお、「世界の終わり」側は一度、中編小説『街と、その不確かな壁』として1980年に別バージョンで発表されており、さらに2023年には『街とその不確かな壁』として別の長編小説としても書き直されています。
謎めいたこの作品は、どうやら村上春樹の中でも特別な意味を持った物語でもあるようです。
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のあらすじ
以下は『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のあらすじです。
高い壁に囲まれ、外界との接触がまるでない街で、そこに住む一角獣たちの頭骨から夢を読んで暮らす〈僕〉の物語、〔世界の終り〕。老科学者により意識の核に或る思考回路を組み込まれた〈私〉が、その回路に隠された秘密を巡って活躍する〔ハードボイルド・ワンダーランド〕。静寂な幻想世界と波瀾万丈の冒険活劇の二つの物語が同時進行して織りなす、村上春樹の不思議の国。
新潮文庫裏表紙より
村上春樹のおすすめ作品⑩『辺境・近境』(1998年刊)
Amazon評価(レビュー数) | ☆4.2(278) |
ナレーター | 永山瑛太 |
再生時間 |
6 時間 44 分 |
最後にひとつ、小説以外の作品もあげておきます。
村上春樹は、小説以外の作品も面白いんです。
この作品では、アメリカやメキシコといった遠くから、作者自身の地元である神戸といったまさに「辺境・近境」の旅について書かれています。
作家が各地を訪れてなにを見て、なにを考えたかということから、「これまで読んできた作品を書いた村上春樹ってどんな人だろう?」という疑問にもこたえる作品になっているかと思います。
現実の村上春樹は、ユーモアたっぷりで、やはり洞察に富む人物であることがわかります。
阪神淡路大震災後の神戸エリアを歩いた文章では、作者のよりパーソナルな一面も垣間見えたり。
また、読んでいると「あれ、この場所ってあの小説で出てきたな」「このときの旅が後の小説にも繋がっているんだ!」などと色々な楽しみ方ができます。
永山瑛太さんの明瞭で歯切れのよいナレーションも、比較的ハードな旅が多いこの作品にぴったりです。
『辺境・近境』のあらすじと目次
以下は、『辺境・近境』のあらすじと目次です。
久しぶりにリュックを肩にかけた。「うん、これだよ、この感じなんだ」めざすはモンゴル草原、北米横断、砂埃舞うメキシコの町……。NY郊外の超豪華コッテージに圧倒され、無人の島・からす島では虫の大群の大襲撃! 旅の最後は震災に見舞われた故郷・神戸。ご存じ、写真のエイゾー君と、讃岐のディープなうどん紀行には、安西水丸画伯も飛び入り、ムラカミの旅は続きます。
新潮文庫裏表紙より
- イースト・ハンプトン 作家たちの静かな聖地
- 無人島・からす島の秘密
- メキシコ大旅行
- 讃岐・超ディープうどん紀行
- ノモンハンの鉄の墓場
- アメリカ大陸を横断しよう
- 神戸まで歩く
- 辺境を旅する
まとめ:村上春樹を読むなら、初心者でも既読者でも楽しめるaudibleの無料体験がぜったいおすすめ!
ここまで村上春樹のおすすめ作品を10冊紹介してきました。
ですが、audibleには村上作品のラインナップがまだまだあります。
短編集だと『神の子どもたちはみな踊る』も捨てがたいし(作品の最後に今後の作風の転換について語っているような「蜂蜜パイ」が収録されている)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』から続くパラレル物語の『1Q84』も紹介できていません。
また、『辺境・近境』で村上春樹自身にも興味が湧いたら、『職業としての小説家』や『走ることについて語るときに僕の語ること』、『猫を棄てる 父親について語るとき』なんかも手に取ってほしい!
10冊のおすすめに入れられなかった作品がたくさんあります。
以下でaudibleの聴き放題で聴くことのできるの村上春樹の作品をまとめました。
私のおすすめで気に入った作品があれば、近い年代の作品を深掘りしてみるのもよいかと思います。(太文字は本ページのおすすめで紹介した作品です)
Amazon audibleの村上春樹作品ラインナップ(2024年11月現在)
作品名(刊行年) | ジャンル | ナレーター |
1973年のピンボール(1980年)(2024年12月17日ラインナップ追加予定) | 長編小説 | 岡山天音 |
羊をめぐる冒険(1982年)(2024年12月17日ラインナップ追加予定) | 長編小説 | 染谷将太 |
カンガルー日和(1983年) | 短編集 | 多部未華子 |
螢・納屋を焼く・その他の短編(1984年) | 短編集 | 松山ケンイチ |
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(1985年) | 長編小説 | 大森南朋 |
パン屋再襲撃(1986年) | 短編集 | 柳楽優弥 |
ノルウェイの森(1987年) | 長編小説 | 妻夫木聡 |
遠い太鼓(1990年)(2024年11月22日ラインナップ追加予定) | 紀行エッセイ | 野間口徹 |
国境の南、太陽の西(1992年) | 長編小説 | 宮沢氷魚 |
ねじまき鳥クロニクル(1994-95年) | 長編小説 | 藤木直人 |
レキシントンの幽霊(1996年) | 短編集 |
滝藤賢一、門脇麦
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辺境・近境(1998年) | 紀行エッセイ | 永山瑛太 |
スプートニクの恋人(1999年) | 長編小説 | 宮崎あおい |
神の子どもたちはみな踊る(2000年) | 短編集 | 仲野太賀 |
海辺のカフカ(2002年) | 長編小説 | 木村佳乃 |
東京奇譚集(2005年) | 短編集 | イッセー尾形 |
走ることについて語るときに僕の語ること(2007年) | 自伝 | 大沢たかお |
1Q84(2009-10年) | 長編小説 | 杏、柄本時生 |
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(2013年) | 長編小説 | 向井理 |
女のいない男たち(2014年) | 短編集 | 市原隼人 |
職業としての小説家(2015年) | 自伝 | 小澤征悦 |
騎士団長殺し(2017年) | 長編小説 | 高橋一生 |
猫を棄てる 父親について語るとき(2020年) | 自伝 | 中井貴一 |
一人称単数(2020年) | 短編集 |
池松壮亮
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村上春樹の作品が気に入ったらまだまだおすすめ作品も
さらに、村上春樹の作品は、audible化されているもの以外にも30冊以上もあります。
audibleで一通りの作品を読んだら、他の本にもぜひ進んでいただければうれしいです。
個人的なおすすめだと、明るい光と暗い影が作品全体を交差しているような長編小説『ダンス・ダンス・ダンス』(1988年刊)もぜひ読んでいただきたいし、村上春樹のデビュー以来の文章スタイルの総決算となっている長編小説『スプートニクの恋人』(1999年刊)、前半期の短編小説の最高傑作だと個人的には思っている『TVピープル』(1990年刊)、作者の3年間のヨーロッパ滞在中に書かれたエッセイ集『遠い太鼓』(1990年刊)は読むと自分も旅をしている気分になります。
まだaudible化されていないおすすめの作品がいっぱいです!(Amazonさん、はやくaudible化を!)
(2024年10月追記)
なんと、2024年9月に『スプートニクの恋人』がaudibleの聴き放題ラインナップに追加されました!ナレーションは宮崎あおいさんで、早速聴いてみましたが、ぎゅっと詰まったこの短めの長編小説の雰囲気にぴったりです。
そのほか、『遠い太鼓』も野間口徹さんのナレーションで、『1973年のピンボール』(ナレーター:岡山天音)、『羊をめぐる冒険』(ナレーター:染谷将太)とともに2024年内に聴き放題ラインナップに追加予定。(うれしい)
これは村上春樹全作品がaudilbeで無料で聴き放題になる日も近いかも!Amazonさん、よろしくお願いします!
audibleの村上春樹以外の厳選おすすめ作品もご紹介
さらにさらに、audibleには村上春樹作品以外にも心からおすすめできる作品がたくさんあります。
このページではそんな厳選したおすすめのaudible聴き放題作品を紹介しています。
まとめると、これらの作品が読み放題に、しかも初回お試し期間なら無料で聞けるAmazonのaudibleは、全人類に試してもらいたいと思う一押しのサービスです。
電子書籍を試し読みするくらいなら、audileで聞いてみるのがほんとうにおすすめ!
オーディオブック初心者の方も、この機会にぜひお試しください!
万が一のaudible解約もフォローする安心設計なので、お気軽にお試しを!
audibleの無料期間を試してみて、「やっぱりオーディオブックは合わないな」と思ったときにも解約しやすいように、本ブログでは若干わかりにくいところのあるaudibleの解約方法もまとめています。(われながらなんていう安心設計!)
ですので、安心してaudibleの無料体験を試してみてください。